過大評価も過小評価も良くない。事実をありのままに評価する
「反省」という言葉は消極的、マイナスのイメージが強いものです。「反省しなさい」ということを幼い頃に何度となく聞かされるためでしょうか。何か失敗をしでかした時に振り返ることを「反省」という言葉のニュアンスに感じてしまったりします。
また近年、プラス思考、積極思考が強調されすぎるあまり、反省ということが軽視されたきらいもあるように思われます。
反省というのは、本来は、振り返ること、省みることです。PDCのCheck(検討)やPDSのSee(検討)という部分に値します。「検討」というと、実施する前にも「案を検討する」という風に使われますから、むしろ語彙的には「反省」という言葉の方が、CheckにもSeeにも相応しいように思えます。
いずれにせよ、仮説を立てる → 実施する → 検証する という最後の部分がいい加減では、次の仮説、Planが良いものが出きるわけはありません。
適切に反省するということは、達成できた、できなかったに関係なく、次の二点で将来を豊かなものにしてくれます。
・その対象に対する見識が深まる
・目標や達成手段(Plan)が更に適切なものになっていく
その対象の見識が深まるというのは、顧客に関連する目標であったなら、顧客や市場に対する見識が深まるということです。「ファイルの整理」などに関する目標であったなら、ファイリングや整理方法、ファイリングする文書そのものに対する見識が深まることになります。
更にいうなら、自分自身の行動の有り様を通して、自分自身の行動パターン、得手不得手などを知ることができますし自己自身に対する見識が高まる、という効果もあります。
達成してもしなくても、反省するというのは、次のように自分自身に問いかけてみることです。
・仮説は良かったのか、良くなかったのか
・良くなかったとすれば、どこが良くなかったのか、なぜ良くなかったのか
・この部分をキチンと整理することで、私たち自身の見識が高まっていくのです
反省の二つ目の効果である「目標や達成手段が更に適切なものになっていく」という点に関してはこうです。
・テーマ選定方法のコツがつかめる
・話のもっていき方、調整のポイントなど他者への働きかけ方を理解できる
・タイミング、スケジュールの取り方が巧くなっていく
このように、達成出来ても出来なくても、反省することを通じて、私たちは大切な資産を蓄積していくことができるようになるのです。
自己評価を実際以上に高く評価(過大評価)するのは次のような場合です。
・反省から学び取る、という機会を棒に振っているのと同じです。キチンと事実を見つめ、原因を考えるようにすべきでしょう
・自分の業績や働きをPRすることは大切だけれど、これからの世の中、自己責任原則と同時に自己PR原則も求められてくる
・目標管理に関する部分は、事実をもとにきっちりと評価すべきで、目標管理以外の部分で、認めてもらいたい働きがあった場合は、別紙を添付するとか、口頭で伝えるとかの工夫が必要
・人事考課と目標管理の連動のしかたは、各社多少の違いがあるから、一概には言えないが、皆さんの自己評価は、人事考課には影響を与えない
・自己評価は、あくまで、「反省をして自分自身の見識を高め、次の目標をよりレベルアップする」という目的のために行わせる部分である、というのが一般的
・人事考課には良い影響をもたらさない。むしろ、「キチンと自己評価をしないいい加減な部下」という見方をされて、かえって考課を落とされかねないのだ
自己評価を実際以上に低く評価(過小評価)するのは、上司評価とのギャップが生じることを過度に恐れることが原因です。
その背景には「過大評価をしている」と上司から判断されては、かえって人事考課に悪い影響があるという、思惑が入っている場合があります。これもまた、人の目を気にした不適切な評価だといわざる得ません。あくまでも自己評価は、自分自身の成長の為に実施するのですから、評価点を気にしすぎるのは良くないことです。
事実をありのままに判断し、評価はするものです。評価点を付けるという行為に集中するのでなく、どのような達成手段が良かったのか、悪かったのか、その原因は何なのか、という点を考えることこそが大切なのです。原因を考えていく行為が、皆さんの仕事に対する見識を高め、将来のレベルの高い目標へと誘ってくれることでしょう。
自分のためでもあり、組織のためでもある評価
適切な自己評価は、自分自身の成長に役立つだけでなく、職場全体の成長にも貢献していきます。一人一人の成功経験、失敗経験を学びあうということが可能だからです。そのようにお互いが、学びあうためには、どのような自己評価が必要なのでしょう。
それは、なぜ目標達成できたのか、できなかったのか、その背景を充分に分析したうえでの自己評価を行うことです。その背景には、次のようなものがあるだろう
・働きかけた対象(例えば営業職なら顧客、事務職ならファイル文書、PCなど)の動向
・働きかけ方(販売促進策、ファイリングの基準など)の適否
それらの目標達成の原因、背景を学ぶことこそが、組織全体としての見識を高めていきます。
文責:田辺和彦
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