『役割』と『ビジネス』の組み合わせによる人事制度
親会社の人事システムに対応した職務等級制度を導入された会社(従業員200名)の事例です。親会社のコンサルタントとして、私はすでにグループ企業向けに職務記述書の整備をお手伝いしていました。その職務記述書を利用して人事制度を運用されていた会社と、改めて個別契約してもらうことになったのです。
そこで人事制度を再構築する前に、いくつかの事業所をまわり社員や幹部の方々にインタビューしました。その場面でコンサルタントとして気づくものが大いにありました。
たとえば、この会社の場合「職種」と言えるほどのまとまった人数が存在するわけではなく、様々な仕事を少人数でこなしている、という特徴がありました。そこで共通的に使用できるような職務記述書というと、どうしても汎用的、つまり抽象的なものにならざるを得ません。
しがたって社員からすると読んでピンと来るような表現ではなく、当たり前のことが抽象的に書いてある、読んでも読まなくても、というような位置づけになっていた、という感じを受けました。
この会社の場合は、その成り立ち上、特にその傾向が強いのですが、これは現代のビジネスにおいて共通した悩みだと感じています。つまり職種や職群といえるほどの共通的に表現できる仕事、職務を設定するのが難しくなってきているのです。
そこで、この会社では幾つかの代表的な「役割」と「ビジネス」を「モジュール」という形で共通部品として準備することになりました。社員とその上司は、それらの共通部品を組み合わせ自分の置かれたビジネス環境、期待されている役割にマッチした評価基準や目標を作る仕組みに変えたのです。
この会社の場合、本格的な導入はこれからです。しかし新人事制度のプロジェクトメンバーの若手からの評価は上々で、
「自分たちの仕事を説明しやすくなった」
「普段使っている言葉がでてくるので親近感がある」
「目標だけだと、一部分しか見てもらえなかった感じがあるが、これだと全体像を見てもらえているという安心感がある」
という好意的な反応が多いようです。幾つもの会社で職務分析のお手伝いをし評価基準を作成してきた私には、この人事制度の構築スタイルは今後は主流になるのではないか、という予感があります。
文責:田辺和彦
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