『結論から入るフィードバック』の是非
人事評価、業績評価のフィードバックは、評価の結果"S・A・B・C・D"という評語を伝えるために実施するので「まず結論を先に言うべき」という考え方があります。
しかし私は、この考え方に賛成しません。フィードバックの目的は、評価結果の伝達だけにあるわけではありません。むしろ部下の成長や上司としてのサポート方法を探ることも重要な目的であると考えています。
部下の立場からすれば「あなたの今期の業績評価はBだ、なぜなら・・・・・、」という流れで説明されても「あなたの今期の業績評価はBだ」という宣告を聴いた瞬間に、上司の言葉が耳に入りらなくなってしまいます。「なぜこんなに頑張ったのにAではないのだろう」という考えが、部下の頭脳を支配してしまからです。
実際、ある会社でフィードバックの立会い(ファシリテーター)をしたとき、その会社のフィードバックは、まず部下の状況や頑張りを聞いてから、フィードバック面接の中間地点ぐらいで、結果(評語)を伝える、という手順になっていました。
管理職Kさんは、すべて手順どおりに実施されていました。順調に進んでいたのですが、ある部下Yさんに、この流れを変えて実施されました。「彼とは人間関係が出来ている。彼は結論から入っても大丈夫」という判断のもと、結論から入いられたのです。
そのときの部下Yさんの反応は、興味深いものでした。紳士的に取り乱すことなく、その結果を受け止められた様子でしたが、机の上におかれた手は、小さく震えていました。このケースの部下Yさんは、その後モチベーションが下がることなく、かえって発奮材料にして頑張られました。だから結論から入ることも時には、効果的かもしれません。
ですが、これは上司と部下の関係が出来上がっている場合のケースです。
部下の状況や頑張ったポイントを聞く、というところから入り、中段で結果を説明する。後段では、次期の目標設定や能力開発などのテーマで話し合う、という流れを「フィードバックの基本」としてお勧めしたいです。
文責:田辺和彦
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