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目移りせずに深堀する ~作家:浅田次郎さんの言~

一つのビジネス、一つの会社、一つの仕事へのこだわり。
深堀。社会や組織の中で活躍する人の共通項かもしれない。確かに豊かな才能があるのに...というタイプの人、組織は、浅田次郎さん言うところの「目移り」が激しいように見える。一方、組織人には、好むと好まざるに関わらず「異動」「昇進」「転勤」「出向」等が待ち受けている。

では冒頭の「一つの」という成功のキーワードとどう折り合いをつければ良いのだろうか? 自分自身の興味ある分野。強みとしたいスキル。これらを自分の心の中で、置いてみることではないかと思う。柱を立てて、それにまつわるノウハウを貯めていく、ということではないだろうか?

例えばデザインすること、設計することが好きな人なら「デザイン技術を強みとし、組織や社会に貢献しよう」という気持ちを持つことではないだろうか。

例えばある製品設計をしている人が、具体的な製品設計技術、設計用ソフトウェアのノウハウがあるとしよう。

しかし設計用ソフトウェアも製品も変わっていく。あるコマンド、機能が詳しいから、という種類のこだわりでは、ソフトが世代交代すれば活かされない。深堀というのは、デザインという行為、それにまつわる一般的な課題、関係者のニーズ等を深く理解していく、ということではないだろうか。そのようなスキルにまで深めておけば、異動しようが管理職になろうが、違う製品やソフトを設計することになろうが、活かせることができるのではないだろうか。

どんなに才能のある人間でも、ひとつのことをやってきた人間には敵わない。多芸多才だと思っている者ほど、目移りがしていろんなことをやりたがる。でも、それがものになった試しはないんだよ。才能って不思議なものでね、ひとつのことをできるヤツは、実はいくつものこ とができるように作られてるの。


【浅田次郎/作家】


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