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④<指示・命令の要訣>目的をよく考え抜いて、明確に方針を示す

指示する場合によくおこすミスは、こと細かく指示してしまうことです。
たとえば仕事の手順などについて、いちいち説明し、そのことに従うようにと命じることなどです。とんち話の一休さんにこんな話が出てきます。

大事な法要に和尚さんと小僧の一休さんたちが出かけるにあたり、和尚さんが「これ、よいか一休にチン念(同僚の小僧の名前)。今日は大事なお武家様の法要なので、くれぐれも粗相(そそう)のないようにするのじゃぞ。お前たちは、わしのやっていることをその通り真似しておればよいのじゃ。いいかくれぐれも申しつけおくぞ。」と指示してしまいます。

その結果、和尚さんがお経をあげている間にくしゃみをしたり、お膳がふるまわれた際にラッキョウを箸でつかみそこねて床に落としてしまうのも、なんでもマネしてしまうというものです。これは、知恵のある一休さんが、和尚さんをあてこすっている笑い話ですが、和尚さんだって人間です。間違いやミスはあるわけです。それまでマネしてしまうと、粗相をしないという目的そのものがどこかへ飛んでしまっているという世界に陥ってしまうわけです。笑いのツボはそこにあるのですが、仕事はそうでは困ります。

さらに、ことこまかな指示は人間から判断力を奪ってしまいます。人間は、状況を判断して行動をするというすばらしい自律の能力をもっています。また、ひとりの人間が物事を完璧に予測したり、事態を想定したりといったことはムリなことです。仕事に協力する人達がそれぞれの頭で考えて判断し、行動していくことがひとりの人間の限界を越え、間違いをカバーし合っていくのです。そのために上司がやるべきことは、方針をきちんと示すということです。方針を示すということは、登山でいうなら富士山に登るということです。それは八ヶ岳でも白山でも木曽の御嶽山でもない、富士山に登るという方針です。そのうえで、どのルートを登り頂上へ到達するのが最も適しているか、それは部下に任せるのです。部下が自分の頭で考えて、三島口から登るのがいいか、須走口から登るのがいいか、自分の力で判断させて案を挙げさせればいいのです。そのうえで、上司からみた判断や適切な助言、コメントを与えるわけです。目的に照らし合わせてA案は妥当といえるのか、易きに流れていないか、またB案は、妥当性の面では問題ないが、ほんとうに実行可能といえるのか。  

これを指示ではなく指導とよびます。指導は、教育の場面ばかりをいうのではありません。組織に共通の理解をもたらし、協力へと導いていくことも指導です。最終的な結論は、もちろん上司がその責任において決めます。決断はひとりの人間が全責任をおって決めていかなければ物事はいつまで経っても決まりません。そのかわり、判断はみんなでおこなうわけです。ここが、組織を動かすポイントなのです。本来そのための指示。命令であるわけです。結論が出たら、それを公式な形として指示・命令にしていくわけです。そうすれば、部下は目的や自分たちがとった行動の及ぼす影響や効果を十分自覚したうえで、納得づくで動けます。また、状況が変化した場合にも、自分の判断で柔軟に対応していくことでしょう。

著:田辺和彦 →360サポーターズ
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