⑤<指示・命令の要訣>なぜそうなのかを説明する
職場の風景を眺めていると、よくこんなシーンに出くわします。
「おい、○○君、あれやっといてね。」「それから、終わったらこれもやっておいてね。」こうした指示を出した側はあまり自覚がないのですが、指示を受けた側になってみるといろんな疑問点が残ります。「あれってなんだろう?」「なぜ今やらなければいけないのか?」「次になぜこれをやらなければならないのだろうか?」まったく説明がないからです。
人間「なぜそうなのか」を説明されないと、理解もその先にある納得もできないものです。また、このような指示の出し方は、人間としての自立のニーズにも抵触します。人間誰しも自分の頭で考えて最適な行動をとりたいといつも思っています。それが組織での協働関係や上司と部下のコミュニケーションを通じて自分の行動のもたらす意味を理解し、どうあったら自分は最も全体として最適な行動をとれるだろうかという意識を生み、他者との協調や上司の命令への服従ということを受け入れるのです。
そうしてはじめて共通の目的を果たすための行動を自他共に認める形でとっていけるのです。人間のこうした行動のメカニズムを理解しているならば、あるいは、仕事のパフォーマンスを最大限に発揮させることが上司の役目だとしたら、あなたは指示や命令を出す立場でどのようなことを大事にしたらいいでしょうか。
もうお分かりですよね!?そう、きちんと「なぜそうなのか」ということを説明するということです。よく考えてみれば何でもない話なのですが、忙しいときや急いでいるときなどは、「なぜ」を端折ってしまいがちです。また、普段よくコミュニケーションをとれている間柄だと、自明のこととして説明することを省略してしまいます。そうなると、お互いが良かれと思ってやっていることがうまくかみ合わなくなってしまいます。
こうしてお互いのつもりがズレるのです。ボタンの掛け違いなどともよく言われますが、こうしたことを避けて、仕事に参画する人々の意識を高め、力が結集されていくためにも、「なぜ」についての説明は欠かすことができないのです。