チーム学習の効果をねらう
人間は自律的に学習し成長しつづける存在です。
その意味においては、チームも同じでしょう。ただし、チームは目的が果たされたら一旦はそこで解散となるのが約束です。そういう意味では、あくまでアドホックな組織なのです。
組織としての第一の目的は目標の達成ということにありますが、ひとりひとりのメンバーにしてみれば、そのチームに所属して何を学んだか、どんな能力を新たに獲得できたかという自分なりの進歩についての実感も、大きな動機づけになるでしょう。リーダーはメンバーの学習ステージを演出する舞台監督でもあるわけです。
人間は毎日の積み重ねの中から学習をしていきます。失敗の中からも積極的な意味を見出すためには、お互いに励まし合いながら進歩していくことが大切です。それをチームとして共通の体験の中から獲得していくことが、人間という社会的な存在にとって大きな意義をもちます。チームを生の人間同士が触れ合う場、そのことを通じて個人が成長する場ととらえるならば、単なる居心地のよさを求めるのではなく、結果としてこのチームに所属して良かったとメンバーがいえるようなチーム運営が大事です。その方法論には、いろいろとあると思いますが、大事なのはどのような学習効果をねらうのかということです。
チームとして活動している間にどれくらい全体的な意味での能力の向上があったかは、メンバー相互の協力関係や役割分担というチームの構成条件から評価していく方法と、チームのシナジーがどのようなメカニズムによって成り立っているのかについて観察する方法とがあります。後者の場合には、ひとりひとりの個人の心理面の領域に目を向ける必要があります。メンバーはお互いを映し鏡とし、相互に影響し合うことで、チームの一員として活動するのに大事な総合的な能力やスキルの獲得、たとえば役割認知と適正な行動といった場を読む力や、役割を越えた協力とコミュニケーション、メインとサポートの交替スキルを獲得向上させていきます。これら総合的な人間力といわれる能力領域は、技術論を単独に扱うことが難しい学習領域です。いってみれば、人から人に伝染していく、あるいは受け継がれていく認識の体系といったものなのです。だからこそチーム活動における学習効果をねらうことは、人と組織のポテンシャルや成長にとって大事なことなのです。