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メンバー相互のコミュニケーションを醸成する

リーダーとメンバーの間に十分なコミュニケーションが成立していなければならないことはいうまでもありません。
しかしチームリーダーシップで大事なのは、むしろメンバー相互にコミュニケーションが存在するかということでしょう。メンバー同士のことだから本人たちの自覚に任せるというのでは、十分とはいえません。

たとえば航空管制官が集う管制塔内でのコミュニケーションを調べてみると、そこには「語らい」があるといいます。単に仕事上求められるやりとりだけでなく、お互いをよく知り合うということがミスを許されないシビアな職場ではもっとも大切なのだそうです。だから、雑談もある意味で大事となります。そういえば、一人一台のパソコン環境にはじまって、飲みニケーションや喫煙場所の撤廃など、職場から雑談の要素が消えています。そこを通り越して「あいさつ」すらない職場も増えています。これは仕事の効率を追求するという点では効果もあるのかもしれません。しかし効率の先にあるチームとしての目的の実現には、プラスとはいえない状況です。

「語らい」によってお互いの価値観やクセというものが次第にわかり、協力をする際の機微や呼吸というものがわかってきます。人間なら誰でももっている間違いの要素をチームの力でなくしていくこともできてくるでしょう。お互いの「つもり」がズレることによっておこるミスの側面からも大事なことでもあります。

リーダーはチームのホスト役といえます。メンバーの専門的な能力が高ければそれだけプライドも高いですし、自分の専門領域以外のことに対する関心も一般的に薄いでしょう。心のゆとりも少ない状態では、十分な"のりしろ"をもって協力・カバーし合うこともおぼつかないでしょう。ですからリーダーはひとりひとりのメンバーの個性は違っていたとしても、それぞれが培った社会的な性格を縁としながら、メンバー相互がよく知り合えるように取り計らう必要があるのです。

この意味でリーダーには、やはり人格的な側面においても優れた性質をもっていることが期待されるといえます。これは一夕になるものではないですが、人の心を大切にする気持ちや、愛情をもって人に接するという人間関係の基本に立ち返れば、誰でも修養することはできるでしょう。普段から人間に関する関心をもち、よく人間を観察する目を養っておくべきです。

「語らい」すなわちカンバセーションの語源は、"共に生きる"という意味があり、単なる「おしゃべり」(=チャット)とは違います。共に生きるという一体感をともなったチームの風土づくりが、信頼の絆を築く一歩となるのです。

著:行時博孝 →360サポーターズ
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