商品のユニバーサルデザイン化
高齢化社会が近づくということで「商品のユニバーサルデザイン化」が話題になったのは何年前だったのでしょうか。
つい数年前の記憶があります。そして来年、団塊の世代が大量退社する2007年を向かえ、高齢化社会も本格化します。高齢化市場は拡大するということで、高齢者のニーズに合わせた商品開発が数多く行われてきました。ところがよく考えてみると、思わぬ結果になっているようです。高齢者に必要となる介護的な商品より、肉体的にも頭脳的にも年齢を感じさせないようにする抗加齢商品がヒットする現象です。
高齢化市場の誕生が話題になったとき、まず介護用品に注目があつまりました。ユニバーサルデザインの視点からは、商品が使いやすいように文字やボタンを大きくするといったことが重視されました。市場の拡大によって、介護ベッドや車椅子なども販売を伸ばしたようです。たしかにそれなりに販売量は増加していると考えられますが、爆発的なヒット商品といえば携帯電話の「ツーカーS」が思い出されるぐらいです。話題になって、ヒット商品の年間ランキングに取り上げられた商品は少なかったようです。
逆に話題になったのは若さと健康を保つ商品でした。脳トレから始まり、コレクション的ホビー・クラフトグッズ、肌を美しくたもつ化粧品、スポーツを長く楽しめる商品といったように、高齢者であっても元気で美しくあるための商品がヒットしています。年齢的には高齢であっても、体も頭も元気な人ばかりです。いまの肉体を維持し、年を取らなくさせる開発がヒット商品の秘訣のようです。
高齢化社会に向けた商品開発の方向性は「高齢者=肉体的能力の低下=体を自由に動かせなくなることで必要となる商品」といった論理でした。介護商品市場は爆発的に拡大するといった幻想がありました。しかし現実は「高齢者=いまの元気さを維持する=年齢を感じさせなくする商品=坑加齢商品」がヒットするという論理のパラドックスがおきているようです。