年功賃金からの脱却を阻害し、男女間格差を助長する「年齢・男女別モデル賃金」批判
「年齢別モデル賃金」は、すでに歴史的な役割を果たし終え、過去の遺物になろうとしている。
戦後の経済成長で、毎年、大きな昇給で従業員をつなぎ止めようとしていた1960年代と1970年代。
成長率が落ち着き始めた1980年代。年功的に昇給を繰り返していると、海外との競争に太刀打ちできない、という問題意識が生まれた。
しかし仕事で給与が決まる米国流の「職務給」は、「人を見て仕事を決める」というスタイルの日本企業には合わない。
その解決策として「職務」を「遂行」する「能力」として職能給制度が提唱され定着していった。
その時期、賃金管理は、まだ多くの会社で、しっかり確立したものがなかった。
「基本給表」という昇給ルールが整備されるのもこの時期以降である。
そこで大きな役割を果たしたのが、年齢・男女・学歴別モデル賃金であった。
当時、職種別の調査・統計はないに等しく、組織側が調査に協力できる情報としては、「我社では、だいたい○歳ぐらいで課長になり給与はこれぐらい、部長になるのは○歳ぐらいで・・・」というモデル賃金であった。
それらの調査データを統計的に処理して、発表する機関が出現した、というのがモデル賃金の我が国での経緯である。
また当時は、産業界全体では「男は会社に定年まで勤め家族を養う。女は結婚したら退職して・・・」という人生を想定していたからモデル賃金も作りやすかった。
だが今日、「モデル」が従業員の大多数を代表しなくなっている。
生涯未婚率も上がっているし、女性が生涯、活躍する、という職場も増えつつある。
「年齢・男女別モデル賃金」は、その歴史的使命を終えているのだが、まだ発表している機関もある。
しかし、男女別に統計値を出すことは、男女別の格差が賃金に生じていることを前提として、「あなたの会社の賃金管理の参考に」としているわけだから、男女差別を定着させるのに一役買っていることになる。
また、モデル賃金が一人歩きしてしまい「そろそろ課長にならないと、出世コースから外れている」、「そろそろ係長にしてやらないと」など余計な意識を生んでしまう。
これからは、モデル賃金の発想を捨てて、もっと仕事や地域の相場を参照する必要がある。
・モデル賃金は、見ない! 見たら、余計なことを考えることにつながる。
・そもそもモデル賃金の調査に協力しない!
という行動をお勧めしたい。
文責:田辺和彦
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